「法律だから仕方ないけれど、現場の実情とは少し違う気がする……」

そんな小さな違和感を、私たち建設業界の人間はこれまで少なからず抱えてきました。特に重量物を扱う現場において、クレーンの免許制度については「もっと現場に即した形になれば、安全性も高まるはずなのに」という想いが、現場の職人たちの間にはあったのです。

安全を守るためのルールが、かえって現場のハードルを上げてしまっているのではないか——そんな長年の「モヤモヤ」が、ついに解消される動きを見せ始めました。

今回は、2027年から始まる予定の新しいクレーン免許制度について、私たち創成鋼業の視点から、その意義と期待をお話ししたいと思います。

第1章:何が変わるの? 制度改正のポイント

鉄骨製造や建設の現場などで広く使われている「無線式クレーン」。このクレーンに関する免許制度が、現場の実態に合わせて大きく変わろうとしています。

厚生労働省は、実態に求められる技能よりも免許取得の難易度が高すぎた現状を見直し、2027年4月に新たな限定免許を創設する方針を固めました。

新設される限定免許の対象

具体的には、以下の条件を満たすクレーン操作が、新しい限定免許の対象となります。

  • つり具の下から水平に15メートルの範囲内で操作
  • スイッチ操作の無線コントローラーを使用
  • 秒速1.1メートル以下の速度で走行する「床上無線運転式クレーン」

これまでは、つり上げ荷重5トン以上の無線式クレーンを操作しようとすると、造船所などで使われるような「運転室が上部にある大型クレーン(運転席式)」と同じ免許が必要でした。しかし、運転席式は操作が非常に難しく、高度な技術が求められます。一方で、手元のコントローラーで操作する無線式は、そこまで高度な技術を必要としない場合が多いのです。

解消される「現場の矛盾」

これまで現場では、ある種の矛盾が生じていました。

免許が取りにくい無線式の代わりに、比較的免許が取りやすい「有線式(ペンダント式)」のクレーンを使うケースがあります。しかし、有線式はクレーンと操作者がケーブルで繋がっているため、操作者は吊り荷の近くを歩かなければなりません。これは、転倒や荷物との接触リスクを高める要因にもなります。

逆に無線式であれば、離れた安全な場所から操作できます。つまり、「より安全なはずの無線式の方が、免許取得が難しくて導入しづらい」という逆転現象が起きていたのです。

「より安全に操作できる無線式の免許を取得するハードルが下がる」——業界関係者の声

今回の改正は、まさにこの矛盾を解消し、現場の安全性を高めるための大きな一歩と言えます。

第2章:私たち創成鋼業とクレーン免許の深い関係

私たち株式会社創成鋼業は、神奈川県川崎市を拠点に、重量鳶、シールド掘削、土木工事、鍛冶溶接などを専門とする工事会社です。約100名の職人が在籍し、日々さまざまなインフラ工事に携わっています。

シールド掘削現場での作業風景

インフラを支える現場では、正確で安全なクレーン操作が求められます

私たちの主力事業の一つである「シールド掘削」の現場では、トンネルの壁面となるセグメントなどの資材を地下へ降ろしたり、逆に搬出したりするために、クレーンオペレーターの存在が不可欠です。また、「重量鳶」として50トンから100トン近くある巨大な部材を扱う際にも、クレーン操作は作業の要となります。

「取りたくても取れない」もどかしさ

これまでの制度では、優秀な若手職人が「無線式クレーンを操作したい」と意欲を持っても、そのための免許試験が実務とかけ離れた難易度であるために、取得を躊躇したり、諦めてしまったりするケースがありました。

「現場では無線コントローラーしか使わないのに、なぜ運転席に乗って操作する難しい試験に受からなければならないのか」

そんな声が現場から上がることも少なくありませんでした。免許取得のハードルが高いことは、人材育成のスピードを鈍らせ、結果として現場の人手不足にも影響を与えていたのです。

現場での打ち合わせ風景

現場監督や職長との綿密な連携にも、共通の技術理解が欠かせません

第3章:免許のハードルが下がると何が変わる?

2027年の改正により、実態に合わせた「限定免許」ができれば、私たちの現場にはポジティブな変化がいくつも生まれるでしょう。

1. 若い人材が活躍しやすくなる

必要以上に高いハードルがなくなることで、意欲ある若い職人が早期に資格を取得できるようになります。自分の手で操作できる範囲が広がれば、仕事へのやりがいも増し、技術の習得も早まるはずです。

2. 現場の安全性が向上する

これが最も重要な点です。無理に有線式を使うことなく、安全な場所から操作できる無線式の導入が進めば、接触事故などのリスクを減らすことができます。「実態に合った技術」を持つ人が現場に増えることは、そのまま現場全体の安全レベルの底上げにつながります。

3. スキルアップ支援の加速

創成鋼業では、職長会での勉強会や技術指導を通じて、社員の成長を支援してきました。今回の改正を受け、会社としても無線クレーン免許の取得をより積極的に後押ししていく方針です。プロフェッショナルとして成長したいと願う仲間を、全力でサポートします。

用語解説:床上無線運転式クレーン
運転席がなく、床上で操作するタイプのクレーンのうち、無線コントローラーを使って遠隔操作するもの。荷物の近くに寄る必要がないため、視界を確保しやすく安全性が高いとされています。

従業員の命を守るために

私たち創成鋼業が何よりも大切にしているのは、「従業員の命を守る」という信念です。

どんなに素晴らしい建築物も、安全が損なわれた上に建つものであってはなりません。今回の制度改正は、働く人々の安全を第一に考えた、非常に意義のある一歩だと感じています。

制度が変わる2027年に向けて、私たちも準備を進めていきます。より安全で、より働きやすい環境を作るために。

建設業界に興味がある方、手に職をつけて自分の可能性を広げたい方。時代に合わせて進化していくこの業界で、私たちと一緒に「地図に残る仕事」に挑戦してみませんか。